2019年

2019/3/7 台湾で家を買う!

前回の日記でも書きましたが、昨年台湾でマイホームを購入しました。
9月から連載コーナーを持たせていただいている台湾のフリーマガジン「My City」3月号でも、番外編「台湾で家を買う」というテーマで2ページいただき、不動産購入に至るいきさつ、台湾で不動産を購入するポイント、引っ越し後の感想などを書かせていただきました。

先日、Facebookに載せたところ、色々な方から反応が!皆さん、台湾の不動産事情に興味があるようです。
文字数制限があるので、こちらの日記では「My City」では書けなかったストーリーも書いてみたいと思います。
 
僕自身、これまで台湾の不動産には全く興味がありませんでした。台湾人の友人よりも若干高い家賃を支払っていた僕は、彼らから、「台湾の不動産は上がり続けるから購入した方がよい」と言われてきました。
バブル時には父の日本橋の実家を一坪数千万で売ってくれないかという話があったり、その後のバブル崩壊を目の当たりにした僕は、冷ややかに「不動産が上がり続けるわけないじゃん!」と思っていました。
 
そんな僕が台湾の不動産に興味を持ち始めたのは、昨年4月に風水師の先生から当時住んでいた家が風水上よくないと言われたことがきっかけでした。その際、不動産価格は今調整段階だから、2019年年末までは買い時だという話を聞きました。
日本と異なり、台湾は賃借人の立場が弱いため、大家さんが売却をしてしまえば、退去しなくてはいけなくなることもあります。僕は台湾歴12年、数か月間の短期滞在も含めて、既に約10回の引越し経験がありますが、もう頻繁に引越しはしたくないし、このまま当分台湾に住み続けそうなので、購入を考えても良いのかなと考え始めたわけです。
 
台湾の不動産価格は2003年辺りから急激に上がり始めました。2007年頃、親友が台北でマンションを購入した時、台北の不動産価格の高さを知り、自分が日本に3年間帰国し、再び台北に戻ってきた2010年頃、価格が上がり続けていたことに衝撃を覚えました。その後も上昇を続け、2013年にピークを打ち、そこからは調整が続いています。
通常、調整期間は4~6年間、調整幅は20~30%だそうです。現時点で調整期間は5年、ピーク時よりも20%下がっているので、そろそろ底かなとも思っています。最も怖いのは地政学的リスクですが。。。
 
台湾での不動産購入で驚いたのは表示坪数です。不動産価格は、坪数 × 単価で決まりますが、この坪数というのが曲者で、実際の自分の部屋の広さではなく、共有部分を含めた坪数で表示されるのです。各建物には「公設比」という専有部分と共有部分の比率が決まっており、新しい建物はジムや会議室等様々な共有スペースがあり、「公設比」は35~40%、つまり、実際自分が使える部屋の広さは表示されている坪数の60~65%でしかないということです。
日本でいう50平米程度の部屋は、台湾では、公設比を35%とした場合、約23坪(50 ÷ 3.3 ÷ 65%)という表示になります。台北中心部の新築マンションの坪単価は100万元(360万円)以上、23坪×100万元=2,300万元(8,000万円以上)と、とんでもない価格になってしまいます。
 
台北中心部で物件を探し始めた僕は、あまりの高さに驚き、その後、会社に通勤しやすい比較的リーズナブルなエリア(台北市北投区・大同区辺り)の物件を探したのですが、どれもこれも古く、狭く、眺望も悪く、なかなか自分が気に入る物件に出会えませんでした。気に入った物件が出てくる度に、風水師の所に平面図をもって見てもらいに行くのですが、毎回「NG!」、1,500元(5,500円)を支払って、がっかりして帰ってきました。もう家探しはあきらめようかと思っていた矢先、紅樹林(淡水の一駅手前)の2LDKの新築物件と出会いました。数日後のある平日、風水師に会いに行き、平面図を見せたところ....

「ここはとてもいいわよ!」と二重丸◎をくれたのです。
淡水河と観音山に面している関係で、「雙貴(人)」(貴人」は恩人、困ったときに助けてくれる人という意味)と言われ、よくわかりませんが、二人の「貴人」が現れるようです!
 
ただ、この瞬間、紅樹林では別のストーリーが展開されていました。風水師のお墨付きがでた物件を見に来た夫婦が手付金を払ってしまっていたのです。
実は、この物件、もともとは中国在住の台湾人女性(第一購入希望者)が半年前に手付金を支払っていたのですが、中国から残金の送金がうまくいかなかったらしいのです。彼女が建設会社の社長の息子の友達だったので、送金がない状態でも、半年間待ってあげたらしいのですが、痺れを切らしたディベロッパーは彼女に伝えて、当該物件を再度販売することにしたそうなのです。実は、僕が内覧に行った時は、販売を再開したばかりだったようで、そんな事情があるとは露知らず、少し余裕をみせて値引きでもしてもらおうかと企んでいました。ただ、半年で30件位の物件を見た僕が一目惚れをするくらいの物件なので、他の人も魅力を感じて当然だったと思います。
リビングルーム、ベッドルームから淡水河が眺められて、バスルームに窓がついてるのも気に入りました。
 
翌日、ディベロッパーの担当女性(林さん)からその話を聞かされた僕は仕事の空き時間に紅樹林まで交渉に行きました。手付金を支払った夫婦(第二購入希望者)はまだ希望価格を提示した段階で、その金額にディベロッパーがOKを出さなければ契約締結には至らないので、その夫婦の希望価格を聞き出し、自分はそれよりも多く出すので、自分にチャンスをくださいと懇願しました。その場で何回か上層部に電話をして確認をしてくれましたが、最終的には、林さんの同僚が対応したお客さんとのことで、同僚が商談中の物件を奪うことになるのは申し訳ないからと断られました。林さんからは同じ建物の他の部屋(ワンルーム・3LDK)を勧められたのですが、広さや窓の向き、景色等、初めの部屋を見てしまっているので、どの部屋も惹きつけられませんでした。
「僕が気に入ったのはこの部屋だけなので、今回はきっと縁がなかったのだと思います。万が一、万が一、その夫婦がキャンセルをすることがあれば連絡をください」と言って、意気消沈した状態で現場を離れました。
 
二週間後のある平日の午後、林さんからの電話が鳴りました。笑いながらも淡々と、「手付金を支払った夫婦が3LDKの部屋を購入することにしたので、あなたにチャンスが舞い降りてきたわよ!」との報告でした。それはまさに青天の霹靂。神様は第三購入希望者の僕にこの物件を与えてくれたようです。
  
ここからが引っ越し後の感想です。
11月初旬の契約から、ローン申請などで約一か月半、クリスマス前に引っ越しが完了しました。余裕かと思っていた片道一時間の通勤ですが、慣れるまでの一か月は相当きつく、ストレスがたまりました。北投から淡水までの電車の本数は少ないため、一本逃すと、8分待たされたり、家を出て30分が経過した頃から、「士林(引越前)の家だったらもう会社に着いていたよな~!?」とか、「たられば」のネガティブな発想になってきてしまいました。「なぜあんな遠いところに家を買ってしまったのだろう!?」と本気で後悔した時期もありました。ただその後、自宅の目の前のバス停から会社の最寄駅まで乗換えなしで着く路線(756)を発見したのです。この756のバスこそが僕の「貴人」なのかもしれません。

僕の大好きなベストシート、まるで飛行機でいうビジネスクラス並みのシートです。
ほぼ起点から終点となるので、行きも帰りも大抵空席があります。
バスに揺られながらの約50分間の通勤、バス好きの僕には最高です。

 
通勤時間中はYoutubeで台湾のラジオを聴きながら中国語のブラッシュアップ、平日の夜はマンションのジムでランニング、週末は屋上にある貸切り温泉、

また、淡水近辺の散歩や飲食店開拓等、やっと、淡水の生活が快適に感じられるようになってきました。

紅樹林駅前のマングローブ林特別保護区の散歩コース、天気の良い日は最高の散歩を楽しめます。
 
不動産購入は結婚同様、人生の一大事。思い切りが必要です。 何事もそうですが、100%完璧な選択というのはなかなかありません。問題はその後、自分の選択が正しかったと思わせるための努力と行動ではないでしょうか。
僕は引き続き淡水を愛せるよう努力をしていきます。