2017年

2017/7/15 5周年のご報告

私事で恐縮ですが(そもそもこのブログのすべてが私事ですが)、2012年7月に立ち上げた会社が5周年を迎え、6年目に突入しました。
先日、近いうちに開業予定の医者の友人から独立する際の心得などを聞かれ、その際、起業しても5年後まで残っている企業は約15%、10年後まで残っている企業はたったの6%しかないという興味深い話を聞きました。そう聞くと、我ながら簡単なことではなかったと感じるとともに、幸運だったとも感じます。

5年前の2012年6月9日、ある出来事がきっかけで以前勤めていたコンサルティングファームを辞める決意をしました。普段穏やかな性格と言われる僕ですが、自分が許せないと思うものに対しては激しく抵抗する質で、当時もそのようなきっかけで突発的な独立劇につながったわけです。あんな事がなければ、そんな思い切った決断はできなかったでしょう。
会社を辞めるとなると、次なる選択肢は転職活動という流れになりますが、当時、僕には転職したいと思う会社が全く思い浮かびませんでした。一人っ子で、あまり協調性がなく、組織の中で力を発揮できるタイプではないことは十分わかっていたので、僕に残された道は自分で会社を立ち上げることだけでした。というわけで、前職同様、台湾に進出する日系企業の会社設立や会計に特化したコンサルティングファームを作る準備を開始したのです。退職の決意から2日間、多少将来に不安を感じましたが、3日後には、各方面への根回しを開始し、6月20日には自分の名前を使い、「太郎顧問有限会社」という名前で会社名の予約(会社設立前の社名を確保する手続き)をしました。

101年6月20日(101年は台湾の元号で西暦では2012年)
 
あれから5年が経ちましたが、当時、気持ちよく働かせていただけるクライアントさんや提携会計事務所に恵まれ、心地よいオフィスで、愉快な同僚達と楽しく仕事ができている今の姿を想像することはできませんでした。


経営とは「決断」の連続と言われることがあります。
「どのようなクライアントさんと契約をするか」、「その際見積もりをどうするか」、「どのような人を雇用して、どのような社内の雰囲気を作るか」、「どのような協力会社と手を結ぶか」、まさに「決断」の連続です。何かを決断する時、大学の先輩である足立さん(元台湾山頭火社長)から教わった「損して得取れ」という言葉が頭に浮かびます。

様々な決断をしたこの5年間で、忘れられない一つの決断があります。それは、以前のコンサルティングファームで僕が担当していたクライアントの担当者・Yさんに纏わる話です。同年代ということもあり、たまに飲みに行ったりする関係でしたが、僕が退職した一か月後、彼から「10万元(日本円で30万円)を貸してほしい」という電話がありました。若干微妙な金額だったので、少し考えさせてくださいと伝えて、とりあえず電話を切りました。
①お金が必要になった理由が納得できたこと、②既に退職をして関りがなくなったとはいえ、彼の上司のメールアドレスは分かっているので、彼が借金を踏み倒すことはないと感じたこと、③この日までに返しますという期日を指定してきたこともあり、僕は振込先を聞くために電話をし、すぐに送金をしました。
その夜、足立さんと飲みに行った際にその話をすると、「馬鹿者!そんな簡単に金なんて貸すもんじゃない!」と怒鳴られました。その際、僕は足立さんに「返ってこないという覚悟はできてますし、僕なりに考えて貸すという決断をしたのです」と返答しました。
僕が信じた通り、Yさんは約束の期日にお金を返してくれて、この話は何事もなく終わりました。

その数週間後、再びYさんから連絡がありました。
「日本人の会計士を探している会社の社長と会ったので、二村さんを紹介してもいいですか?」
その際彼は、同じく会計士である僕の元上司を紹介することもできたはずですが、僕に連絡をくれ、そして、この紹介していただいた社長さんを通して、その後5年間に渡り、何社にも及ぶ素敵なクライアントさんとのご縁ができました。
もし、あの時Hさんのお願いを聞いていなければ、きっとその後の連絡はなかったでしょう。
そう考えると、あの時の決断がその後の太郎会社の運命を変えたと言っても過言ではありません。
 
僕は会社の売上目標額は設定していません。僕の上に「売上を伸ばせ!」という上司がいるわけではないし、何よりも売上目標を立ててしまうと、達成させるために、相性の合わない企業さんとまで仕事をしなくてはいけなくなるからです。
馬鹿正直で、機転の利いたことが言えず、営業活動が苦手な僕ですが、5年連続の増収という結果を出せたのは、いろいろな場面での決断がうまく作用したのかもしれません。

最近は台北における競合他社が増え、また、統計上も日本から台湾への投資件数も投資金額も若干減っているようで、6年目は減収になりそうではありますが、既に進出済みで別の会計事務所と契約をしていたある日系企業から相談があり、7月から弊社のクライアントになっていただきました。これまで新規で台湾に投資をする日系企業を顧客ターゲットとしていましたが、最近は、別の会計事務所に委託をしているものの、不満を感じ、会計事務所を変えたいという進出済みの日系企業も数多くいることを感じ始めており、これからは、如何にして、そのような企業さんにアプローチができるかが課題になっていく気がしています。

当然、弊社の既存のクライアントさんにも他の会計事務所へ移るという選択肢もあるわけで、そのような決断をされないよう、引き続き、緊張感を保ち、誠実に対応をしていきたいと思います。そして、今から5年後の2022年(僕が45歳の時)には、笑顔で10周年の報告ができるように頑張ります!