2015年

2015/11/14 今話題のドキュメンタリー作品「湾生回家」

先日、「灣生回家」というドキュメンタリー作品を見に行ってきました。
「灣生」とは「日本統治時代(1895年~1946年)に台湾で生まれた日本人」、「回家」とは「帰る/戻る」という意味なので、終戦により台湾を引き揚げて日本に戻らざるを得なくなった灣生、その湾生の台湾への帰郷をテーマにした作品です。

 
作品の中では、灣生が何十年かぶりに台湾へ里帰りした姿を追い、そして、彼らの台湾に対する思いが語られています。台湾をこよなく愛する日本人はたくさんいます。何かのきっかけで台湾と接点を持ち、台湾にはまってしまった僕のような人間は少なくないはずです。
僕も過去(2007年)に一度決断をして、台湾を引き払いました。僕の場合は、台湾の居心地が良すぎて、そのままでは日本人であることを忘れそうになったので、4年半の滞在後に一度日本に戻る決意をしたのですが、一般的に台湾を去る理由としては、企業の駐在員として台湾で数年働いた後に帰任命令がでて帰国するパターン、台湾が大好きで留学をしたものの時間がきて帰国するパターンなど、いろいろなケースがあります。そして、ほぼすべての人が後ろ髪を引かれる思いで台湾を去っていきます。
そんな台湾を離れる経験をしている日本人であれば、湾生が台湾を去る時の思いは痛いほどわかると思います。ただ、決定的な違い、それは、現代の僕らとは異なり、灣生の人たちは強制的に台湾から離れなくてはいけなかったことでしょう。日本統治時代を経験した台湾人の日本に対する思い、日本統治時代に台湾で生まれた日本人の台湾に対する思い、日本と台湾の深い繋がりを再認識させられる素晴らしい作品でした。
 
先日病院で順番待ちをしていた際、診察室から老夫婦が出てきました。僕は何となく日本統治時代のご老人かと思いました。僕を見たおばあさんが、付き添いで来てくれていた僕の台湾人アシスタントに台湾語で僕が日本人かを確認した上で、僕に日本語で話しかけてくれました。約10分間、日本統治時代の話を流暢な日本語で話してくれました。「日本統治時代はよかったよ」と。一方的に話をして、お会計をして、クリニックを去ろうとしたそのおばあさんは、帰り際に「うちはこの近くだから、今度遊びに来なさい!」と言ってくれました。
住所を聞いていないので、遊びに行けるわけがないのですが、こんな風に日本統治時代をよく思っている年配の方から、日本語で話を聞けることはとても貴重で、幸せなことだと思うとともに、こんな台湾人の人懐っこさや人情に、僕は絆されてしまうのです。
 
日本ではまだ公開予定はないようですが、台湾が好きな日本人には是非見てもらいたい作品です。
作品紹介①
作品紹介②